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生産現場の効率化手法を間接業務に応用。RPA+紙のデータ化で「工数3割減」を目指す

生産現場の効率化手法を間接業務に応用。RPA+紙のデータ化で「工数3割減」を目指す
社名 Jマテ.カッパープロダクツ株式会社
事業内容 銅製品の製造・加工・販売
ウェブサイト https://www.jcp.joemate.co.jp/

– お話を伺った方 –
代表取締役社長
山本 耕治 氏
生産管理部 副部長(DX推進プロジェクトリーダー)
西本 俊介 氏
生産管理部 係長
植木 学 氏

Highlight

  • 生産現場で実績ある独自の業務分析手法を事務処理に応用
  • RPA活用で、既存システムはそのまま対外業務まで効率化
  • RPAによる処理の前段階で、紙のデータ化サービスが活躍

生産現場で培った業務標準化の知見をもとに、PC上での定型作業をソフトウエアで自動実行するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用に着手した新潟県の銅合金製造メーカー、Jマテ.カッパープロダクツ株式会社。RPAツール「BizRobo! Lite」と、紙帳票をRPAでも扱えるデジタルデータに変えるサービス「デジパス」を導入し、活用の要所を押さえたことで、当初計画したロボットの大半が導入2カ月で実稼働しだすなど素早い立ち上げに成功した。部門や社内外の垣根を越えた効率化で、導入初年度から費用以上のリソース創出効果を、また2年以内に社内の定型業務に要する工数の3割減を見込んでいる。今後はデジパスによる紙書類のデジタル化の成果を生かしたデータ活用など、より有意義な仕事に集中できる環境を整えつつ、成果を社外にもアピールし、採用難が続く地域で選ばれる企業としての地位を確立したい考えだ。

「定型業務の自動化で、人しかできない仕事を」

地域で続く採用難、希少な社員の活躍を図る

雪解け水を用いた水力発電の電気に恵まれ、金属・化学製品など100年近い製造業の歴史を持つ新潟県上越市。この地で2023年に創業40周年を迎えるJマテ.カッパープロダクツ株式会社は、資源回収された金属を鋳造・加工する銅合金製造のメーカー。水道部品の連続鋳造品で国内トップ級のシェアを誇る、従業員数約300人の企業だ。

独自の業務標準化プロジェクト「Jマテ生産方式(JPS)」を2015年から進め、生産現場の生産性を高めてきた同社社長の山本耕治氏は「Excelマクロなどを用いた各社員の工夫で、事務部門でも効率化が図られてきましたが、上越地域では慢性的な採用難が続いています。希少な社員が、人しかできない仕事で活躍するには定型業務の自動化を全社で進めるべきと考え、JPSの知見を生かしたRPAの活用を2020年策定の中期経営計画で掲げました」と振り返る。

想定用途で3製品を検証し、自社に最適と判断

紙書類のデータ化との一体提案にも高評価

社内からRPA担当者を募り、2022年4月にツールの導入検討を本格化させた同社は、3製品を試用。マクロでは難しかったEDI(電子データ交換)の取引先データ取得を自動化できるか検証した。操作性や機能、またサポートの充実度や中長期的な費用対効果の見通しを比較した結果、RPAテクノロジーズ株式会社が提供するサーバ型RPAツール「BizRobo! Lite」、および紙書類のデータ化サービス「デジパス」の導入を決めた。

選定に携わったRPA担当者の植木学氏(生産管理部係長)は、こう語る。「BizRobo! Liteは、一定時刻に自動起動するスケジュール実行機能が標準装備で、動作も安定していました。さらにデジパスを併用すれば、データ処理の前段階にあたる紙からのデータ入力や確認作業も解消できると提案を受け、『ちょうど私たちがやりたかったこととマッチしている』と判断しました」

自社・取引先システム間のデータ処理に積極活用

受発注など20業務の再構築を経てロボットを設計

生産現場で実績豊富なJマテ.カッパープロダクツ独自の業務分析手法を用いて、同社はまず主に営業事務を分析し、より簡素化した手順に再構成。その上で、受発注処理など20業務で28種類のソフトウェアロボットを利用している。その大半はツール導入後2カ月内に稼働を始めた。

同社のDX推進全般を統括する西本俊介氏(同部副部長)によると、スピード開発の勝因は「いきなり完璧なロボットを目指さなかったこと」。例外的な処理の実装をいったん除外したシンプルな設計は、導入当初のトラブル回避にも役立ったという。

特に重点的にロボット化されたのは、同社と取引先の基幹システムにまたがる受発注データ処理だった。西本氏は「システムは容易に改修できない、かといってマクロでは触れない、従来手をこまねいていた工程を改善できるのがRPAのメリット」と評価する。

導入初年に1,000時間創出で投資回収の見通し

対外業務をWin-Winの提案で効率化する手法も確立

BizRobo!の効果的な活用により、同社は導入初年から、導入費用を上回る年1,000時間相当のリソース創出を達成する見込みだ。

数値的な効果のほか、取引先と協調して改善を達成した点も大きいという。西本氏は「RPA向けにデータの様式を見直していただくことで、既存システムはそのまま自動処理可能となり、従来は手集計で週1回通知していた在庫・納期情報が、毎日自動配信となりました。先方にもメリットがある形で対外業務を改善する手法は、今後私たちが取り組むDX(デジタルトランスフォーメーション)全般のモデルになるでしょう」と語る。

また、紙をスキャンするだけで目視確認済みのデジタルデータが最短2時間で届くサービスのデジパスでは、近く月1,400枚の注文書・納品書が入力不要となり、同33.5時間の余力をもたらす見通し。今後請求書などにも活用を広げていく計画だ。

部門間の重複業務を解消し、工数3割減に挑む

培ってきた全体最適の方法論をBizRobo!で実践

BizRobo!導入2年目となる2023年にかけて、同社は対象業務をさらに拡大し、「社内の定型業務に要する工数の3割削減」(山本氏)を達成できる見通しという。

その自信は、導入前から各部門一体となって全体最適を図ってきたJPSの実践が根拠となっている。植木氏は「例えば、受注した製品に在庫を充てられるか・新規生産が必要かの確認は、現状では営業・生産管理の両部門で二重に行っています。これは、部門ごとに利用できるシステムの権限が異なるのが主因ですが、BizRobo!を使えば権限を持つ側に実行依頼を送るなどして、工程の多くを統合できるでしょう」と語る。

BizRobo!とデジパスが生みだす余力をもとに、次なる改善を進める歩みの先には、デジタル化で蓄積していくデータを生かしたAI(人工知能)の応用なども控えている。そうした将来像も見据えながら、同社は今後、さらに大規模な業務変革に挑んでいくという。

BizRobo!活用は、高度なデータ活用に向けた「基礎固め」

作業負担を減らし“人を活かす”企業姿勢をアピール

「BizRobo!活用を含む先進的な取り組みを社内外にアピールしようと、このたび当社製品の素材である銅(英語でCopper=カッパー)と、地元の『大潟かっぱ祭り』にちなんだ「かっぱ」のキャラクターを作成しました。地域との交流の中でも、デジタル活用で“人を活かす”私たちの姿勢を伝え、激化する採用競争の中でも選ばれる企業でありたいと願っています」(山本氏)「紙書類のデジタル化を進めるにあたり、負担を感じていたのが、ISO監査対応の関係上、変換したデータのダブルチェックを求められる点でした。この点でデジパスはデジタル化だけでなく、その後のチェックもお任せでき、実際の品質も確かです。BizRobo!と共に、『ユーザーとして非常に助かっている』のが本音です」(西本氏)

「デジパスで紙書類をデジタル化し、またBizRobo!で円滑にデータを扱える環境を整えるのは、直近の業務効率化はもちろん、AIやBI(ビジネスインテリジェンス)といった高度なデータ活用に向けて基礎を固めるためでもあります。取り組みの意義が今後さらに増すことを信じ、目の前のロボット開発を加速させていくつもりです」(植木氏)